こんにちは、ハクロです。
マシュー・サイド著、失敗の科学の紹介です。
数年前に流行っていたときには読めなかったのですが、図書館で棚に並んでるのを見かけて読んでみました。
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2016-12-23)
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ためになる話が満載でしたね。とても勉強になりました。
目次
簡単な内容のまとめ
成長、発展のためには失敗から学ぶことが欠かせない。本文中にも出てくるのですが、失敗は「してもいい」ではなく「欠かせない」ということ。
「失敗から学ぶ」ということは言葉にすると簡単だし、みんなわかっていることではあります。
ただ、それを実践するのは難しい。ミスをを放置することによって、多大な損害が生まれていることに気づくことすらできていない。
ということを、たくさんの事例を紹介しながら説いている本です。
たくさん例に出てくるのは、航空業界と医療現場。
航空業界や医療現場では、些細なミスが人命に関わる業務です。
しかし、航空業界では墜落事故などがあった場合にはブラックボックスを解析し、失敗の詳細なデータを取り、次に活かすということが行われています。
反面、医療現場では投薬のミスや手術ミスなどの医療過誤は、原因が明らかにされず、放置されている。
もちろん前者が健全であることはわかります。
誰しも仕事や生活のなかで、失敗をしますが、そこから学ぶことができるかどうかがとても大事。
そのために気をつけるべきことが、たくさん紹介されているので、誰しもにおすすめできる本だとおもいました。
特に、ビジネスマン、経営者の方は組織の成長のためのエッセンス盛りだくさんなのでおすすめです。
本の中からいくつかキーワード的なものを紹介したいと思います。
クローズドループ
直訳すると閉じた輪っかですね。
①ミスをする
↓
②失敗に気づかない、隠す
↓
③内容が共有されない
↓
④原因がうやむやになる
↓
①に戻る(ミスが繰り返される)
ミスが検証されないが故に、改善策も提示されない状況を言います。成長のためには、このクローズドループ状態をいかに脱するかが鍵となります。
クローズドループの例として、瀉血療法が紹介されています。
瀉血療法とは2世紀ごろのギリシャの医師ガレノスが考案したとされる治療法です。血を抜くことで、毒を一緒に出すという考えの治療法でした。
瀉血療法にはなんの治療効果もありません。なのに、この治療法は19世紀ごろまで信じられてきました。
これは医療が発達するまで、治療の結果が検証されなかったことが原因と言われています。
このように、いま行っていることが正しいのか(効果があるのか)検証せずに物事を盲目的に進めると、気づかないうちに多大な損失を被っている可能性があります。
認知的不協和
このせいでミスを隠したり、正当化したり、事実を歪めて見てしまうことになり、成長に結びつかない事態になります。
なぜ、隠したり正当化したりするのかという原因が認知的不協和です。
具体例は詐欺師に引っかかってしまってしまった人の反応があります。
「○○○○年○月○日に世界が滅亡するので、私のところにいれば宇宙から救いが来ますよ」と言う詐欺師を信じたが、何もなかった。
このとき、騙された人はどういう反応をしたのか?
進学者のフェスティンガーはこのカルト教団に潜入し、信者の反応を観察したそうです。フェスティンガーは信者は怒ると思ったそうです。
実際には信者は怒るどころか、ますます教祖を信じるようになったそうです。なぜそうなったのか?
騙された信者は失敗を認めてもとの生活に戻ることもできました。しかし、それは自分の無知を世間に晒すことになる。
「詐欺師に騙された無知な自分」と「救いを求めた敬虔な信者としての自分」の間で葛藤することになったわけです。
前者を選択すると恥ずかしいが、後者を選べば自分を正当化できる。
このように保身に走ってしまうことで、失敗から学ぶことができないことになります。
知るは一時の恥、知らぬは一生の恥みないなものですね。
「犯人探し」バイアス
悲惨な事故や、事件があったときには誰か「犯人」がいるはずだ。「そいつ」が悪いんだと思ってしまいます。
しかし、実際にはいろいろな要因が複雑に絡まり、事故が起きるのです。
それを詳細を明らかにせず、だれか一人に責任を押し付けることで安心してしまおうとしてしまう傾向があります。
それが「犯人探しバイアス」。クローズドループに陥ってしまう原因の一つです。
対処法は、つじつまの合ったストーリーに飛びついてはいけないと肝に命じておくこと。
情報の信憑性を常に検証すること。
非難は成長を産まないということ。
進化に失敗は不可欠
失敗から学ぶというプロセスを取り込むことで、成長型の仕組みを作ることもできます。
ユニリーバの洗剤を粉末に加工するためのノズルは、当初すぐに目詰まりを起こして生産性が高くなかったそうです。
改良するために数学者チームに依頼したが、目詰まりは治らなかった。
次に生物学者チームは次のように改良に取り組んだそうです。
①ノズルに少しづつ別の変化を加えたサンプルを10個作った。
↓
②効率を検証
↓
③最も効率のあがったノズルをもとに、変化を加えた別のサンプルを作った
↓
④効率を検証、繰り返し
実際には効率が上がったと言っても、1%程度の変化しかなかったそうです。
しかし、たくさんの変化が生まれ、たくさんの失敗を繰り返し、最終的には素晴らしいものが完成したそうです。
それまでに作られた失敗作の数は449種。すごい数。
この方法は進化論や遺伝に関する淘汰のプロセスを組み込んだ具体例の一つです。
まとめ
だれもが陥りやすい失敗の罠を網羅している良書だと思います。
心理学や科学の知識があれば、もっと楽しめるし、逆にこの本をきっかけに他の分野への興味を持つこともできるでしょう。
この本でカール・ポパーという哲学者を知ったのですが、どんな方かとても興味が持てました。
出展にもいくつかカール・ポパーの本がありましたので、機会があれば読んでみたいです。
法政大学出版局
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たっか。笑
それではー
ディスカヴァー・トゥエンティワン (2016-12-23)
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