こんにちは、日々さまよっているハクロです。
読書感想及び本の紹介です。
紹介するのは小川洋子さんの「夜明けの縁をさ迷う人々」です。
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小川洋子さんはいろいろな賞を受賞されていて、映画にもなった「博士の愛した数式」で有名ですね。
「博士の愛した数式」はハートフルなお話ですが、他の著書を読んでみると印象が180度変わるくらい奇妙なお話が多いです。(ホラーとミステリーを足して3倍濃縮して牛乳で割ったみないな感じ?)
この「夜明けの縁をさ迷う人々」は9つの短編でどのお話も独特なキャラクターが登場する、魅力てきなお話ばかりでした。
気に入ったお話を2つご紹介しますね。
教授宅の留守番
大学の用務員をしている「私」の一人称で話が進みます。
登場人物はもうひとり。同じく大学の食堂に務めるD子。
D子は数日前に放火により焼け出され、海外出張で家をあける教授の家にホームキーパーとして留守番を任される。
「私」はD子のお見舞いがてら教授宅に訪れる…
といった感じで話が進むのですが、2ページ読めば不穏な空気しか感じない。笑
そもそも「教授」の説明が少なすぎることに違和感があるのに、D子の「教授」に対する陶酔ぐあいが常軌を逸している。
留守番で間借りしているにしては、家の中を把握しているD子。
読んでるとオチをなんとなく察っすることができるのですが、読み終わるまでのぞくぞく感がすごいです。笑
ちょっと怖めの話ですが、気に入った話でした。
イービーの叶わぬ望み
街で一番古い中華料理店、福寿楼エレベーターボーイのイービーのお話。
イービーはエレベーターの中で生まれ、成長とともにエレベーターから出なくなり、自然とエレベーターボーイとなった。
自分をエレベーターの中で取り上げてくれた育ての親のチュン婆さんの死をきっかけにエレベーターから出なくなり、エレベーターに合わせるみたいに成長も止まった。
そんなイービーの望みとは…?
奇妙な生い立ちでありながらも、エレベーターボーイとして優秀なイービーに対してみんな優しく接してくれる。ウェイトレスとして働くことになった「私」との関係も親密で良好。
すごいあったかい感じのお話に感じるのだけれど、どこか悲しげな雰囲気があります。
それは、タイトルにもある通りイービーの望みがとても切ないものだからかもしれないです。
記事書く際に読み直しながら気づいたのが、小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」に導入や設定が似ていますね。
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調べると、2007年「夜明けの縁~」で2009年「猫を抱いて~」でした。割と近いですがモチーフとか一緒だったりするんでしょうかね?
おすすめなところまとめ
やっぱり魅力的なキャラクターですね。
上で紹介した、D子やイービー以外にも短編ごとに個性的キャラクターがたくさん。
関節カスタネット奏者のために涙を売る少女とか、どうやったら思いつくんでしょう。すごい。
文章次第ではただの変なキャラクターで終わってしまうのに、小川洋子さんのお話はどうしてこんなにキレイなんでしょうね。すごい。
あとは、短編でさっくり読めるところが一番ですかね。入門書的な?
見落としがちですが、扉絵も素敵です。お話としっかりリンクしてもいるので、読み返してみると面白いですよ。
それでは、良い読書を~